社内のさまざまな管理を任されている総務は、法人向けインターネット回線を導入・検討する場合に重要な役割を果たします。技術の導入によって会社の利益を最大限に高めるには、インターネットの基本的な知識と自社の業務の状況を把握し、最適な回線を選ぶことが重要です。今回は、回線の導入において知っておきたい分野を3つお伝えします。
固定IPアドレスの仕組みとできること
法人向けインターネット回線の利点は、固定IPアドレスが付与されることにあります。IPアドレスは、インターネットの世界で通信を行う際の住所のようなものです。IPアドレスには動的のものと固定のものがあります。動的IPアドレスは、インターネットに接続するたびにIPアドレスが変わります。
住所であるIPアドレスが接続のたびに代わることに不安を覚える方は多いかもしれませんが、家庭などで使用されるインターネット回線では通常に行われていることで、ホームページを閲覧したり、メールを送受信したりする場合などでは動的IPアドレスでも問題はありません。
一方、固定IPアドレスを取得していると、常に一定のアドレスで通信を行うことができます。固定IPアドレスのメリットは、インターネット上のアドレスが一定であることで、外部に情報発信する場合に利便性があるいうことです。たとえば、自社でWEBサイトを運用することが可能になります。会社としてできることが増えること以外の利点として、セキュリティを向上できる点が挙げられます。
最近ではサーバーへの不正アクセスが社会問題になっていますが、自社でWEBサイトを運営している場合に、許可した固定IPアドレスからしかアクセスを許可しないなど、セキュリティ面を強化できます。総務担当はこのような取り組みを行うことで、取引先の企業からの信頼性を勝ち取ることも可能であることを知っておく必要があります。
VPNの知識と自社での運用方法
法人向けインターネット回線の導入を検討している場合、複数の拠点や営業所を持つ企業の総務担当者が知っておくとよい知識に、VPNがあります。VPNとは、英語の「Virtual Private Network」の頭文字をとった言葉で、仮想の専用線という意味合いになります。専用線は官公庁や金融機関などセキュリティを強化して通信を行う必要がある企業や団体などが利用していますが、非常に高額であるため、一般企業はVPNを使用して通信の安全性を構築することが多いものです。
このVPNは固定IPアドレスを取得しておくことで利用できるサービスですが、現時点ではインターネットVPNとIP-VPNといわれる2種類のサービス利用が可能であるため、拠点間の通信にどちらを自社で採用するかを決定する必要があります。
まず、インターネットVPNは、一般的に使用されているインターネット回線を利用し、拠点それぞれでVPNを運用できる機器やソフトウェアを入れて運用します。通常のインターネット回線を使うことから、いつでも運用できることと価格が比較的安価であることがメリットですが、トラブルが起きたときの対応はVPN機器やソフトウェアを管理している企業側になります。
一方、IP-VPNは通信事業者の閉域ネットワークを使用しての通信となり、価格は高くなるものの通信の安定性が確保できたり、初期設定後は運用面での企業側の負担を少なくできたりするという利点があります。
その他の法人向け回線の利点と総務担当が把握しておくべきこと
WEBサイトなどを開設していなかったり本社以外の拠点がなかったりする企業でも、法人向けインターネット回線を利用するメリットはあります。その一つは、法人向けインターネット回線を利用すると法人宛の領収証を受け取れるので、税務申告などの際にトラブルを回避できることです。
法人向けインターネット回線で可能なことやメリットを理解すると同時に、総務担当が知っておくべきことは自社でのネットワークの使用状況です。具体的には、自社ではどんな業務で使用しているか、使用する通信端末の台数はどれくらいか、どれくらいの時間、どの時間帯にインターネットにつないでいるのかなどです。
とくに気を付けたいのは、通信機器の接続台数です。今では社内の端末台数に加えて、スマート端末の導入で外部から接続する機器の台数も念頭に置く必要があります。通信端末の接続が多ければ多いほど、回線にトラブルが発生した際に、業務に深刻な影響が出る危険性があります。
今では通信事業者から提供されるサービスの種類が多様化しているので、自社の状況を正確に把握することで、過不足ない最適なサービスの利用が可能になります。そして通信事業者の中には、コンサルティングサービスを提供しているところもあります。設定や運用・管理などについて無料で相談できたり、セミナーや勉強会などを実施していたりするサービス提供会社もあるので、活用することで自社の実情にかなったサービスを導入できるはずです。
法人向けインターネット回線を導入する場合、総務担当は固定IPアドレスやVPNなどの知識を持ち合わせていると、自社の利益にかなう利用ができたりセキュリティ面を強化できたりします。そして、適切な回線を導入できるように、自社のネットワーク使用状況などを把握しておくことが大切です。