法人向けインターネット回線は、設備や機器などをすべて含めて固定資産となっています。さらに固定資産の中でも減価償却資産というものにあたり、耐用年数が定められています。減価償却資産は、耐用年数に従って購入費を分割して経費として処理でき、節税できるというメリットがあります。
使用可能な期間と減価償却資産の見積もり期間である耐用年数
耐用年数という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。しかし意味をきちんと理解している人は意外と少ないので、ここで説明しておきます。耐用年数とは使用可能な期間のことですが、減価償却資産の見積り期間といい換えることもできます。減価償却資産とは、年数がたつにつれて価値が減っていくもののことを指します。耐用年数は、減価償却資産を経費として処理する際に使用されるものと考えることもできます。
もちろんインターネット回線の劣化状態を判断する基準にもなります。法人向けインターネット回線にはサーバーやネットワークオペレーションシステム、アプリケーションソフトやハブ、ルーター、リピーターやLANボード、端末機、プリンター、ツイストペアケーブルや同軸ケーブル、光ケーブルといったさまざまな設備や機器が使われています。これらはそれぞれ耐用年数が違っていて、たとえばサーバーや端末機は6年で、光ケーブルは10年です。この期間を過ぎると設備や機器の劣化が進み、ケーブルが断線したり、機器が停止したりします。
最悪の場合、発火して火災につながる恐れもあるため、定期的に点検や必要ならば工事も行ってください。設備や機器の内、耐用年数が最短のものが6年なのでだいたいそれを目安に点検をするのが望ましいです。また中古の場合もありますので、その場合は早めに点検をしましょう。
耐用年数に従って減価償却をすると節税になる
法人向けインターネット回線の場合、設備を整えるには高額の費用が必要になり、企業の規模によっては100万円を超えることもあります。このような時、少しでも費用を節約したいと考える企業も多いでしょう。そこで役立つのが減価償却です。
減価償却は、高額のものを一度にまとめて経費として計上するのではなく、数年に分けて計上するために必要なものになります。分割して計上することで、長期の節税になり企業の費用削減につながるメリットがあります。減価償却資産になるのは購入代金が10万円以上のもので、10万円以下の設備や機器は一括で処理することが必要です。
減価償却は定額法や定率法、級数法、償却基金法、生産高比例法といった方法で計算できます。この中で法人向けインターネット回線に適用できるのは、定額法と定率法です。それ以外の方法は、かなり専門的な知識が必要だったり、炭鉱業や航空業などにおける減価償却資産の計算に使うものだったりするのでとくに覚える必要はありません。
定額法は毎年同じ額を減価償却していく方法で、計算が非常にわかりやすくて楽な点が特徴です。定率法は購入金額の償却していない金額に対して一定の償却率をかけて毎年計算していくものになります。最初の年が一番高額の減価償却になるため、最初に多めに経費として処理したい場合に向いている方法です。
実際に耐用年数に従って減価償却をしてみよう
ここまで法人向けインターネット回線の耐用年数と減価償却について解説してきましたが、なかなか具体的なものが見えてこなくてわかりづらい点も多かったかもしれません。そこで実際に耐用年数と定額法、定率法を使って減価償却の計算をしてみるので参考にしてください。
ここではルーター設備に、50万円かかったと仮定して進めていきます。定額法は毎年一定の額を計上するので、耐用年数が10年のサーバーの場合、50万円÷10年=5万円となります。同じ条件で定率法を用いて計算すると、償却率は0.25なので初年度は50万円×0.25=12万5,000円です。2年目は未償却額が37万5,000円なので37万5,000円×0.25=9万3,750円となります。同じように計算していけば、毎年減価償却額は徐々に減っていきます。
2つの方法を比べてみると、初年度の減価償却額に2倍以上の差があることがわかります。定額法はどちらかといえば、個人事業主などの少しずつ経費として処理する方がいい場合に向いている計算方法といえます。
法人向けインターネット回線など比較的規模の大きな企業で扱うものの減価償却の場合、1年から3年目くらいに高額を経費として処理した方が大きな節税になるため定率法を使うのがおすすめです。ただしサーバーはオフィス内に設備がある物理サーバーと、他社の物理サーバーをネットワークを利用して使う仮想サーバーとでは、経費を処理する上で分類が違ってくるので注意してください。
法人向けインターネット回線のように費用が高額になるものは、減価償却で節税することが企業にとっては重要です。また自社の経営状況をよく考えて、減価償却の計算方法を選ぶことも大切になります。耐用年数や減価償却のことをきちんと理解して、上手に節税するようにしましょう。