法人向けインターネット回線を検討する際、一般家庭用と比較してセキュリティの高さを重視して選ぶ必要があります。その点で検討したいのがVPNですが、今まで使われてきた専用線とどう違うのでしょうか。また、今時点で提供されているサービスは大きく分けて2つの種類があり、どちらを選ぶとよいか、考慮すべき点について知っておきましょう。
専用線とVPNとの違いを理解する
法人向けインターネット回線で主流だったのが専用線です。専用線とは、顧客が拠点間の接続のために通信事業者から専用に借り受ける通信回線のことを指します。さまざまな顧客が共用で使用する公衆回線・公衆網とは違い、他のユーザーによる利用の影響を受けないため、セキュリティ面でのアドバンテージが高く、ネットワークの速度が遅くなる危険性が低いことが利点です。
そのため、今でも官公庁や金融機関、その他の機密情報を扱う企業などで使用されています。専用線は1960年代に運用が開始され、広く用いられてきましたが、2000年代に入り、高速で情報をやり取りできるインターネットが普及したことで、インターネット回線を仮想的に専用回線のように使用する方法が編み出されました。
これがバーチャルプライベートネットワークであるVPNです。これはいわば仮想的に用いることができる専用線で、いくつかの方法でデータを安全に他の拠点に送ることができます。その方法の1つが暗号化で、カプセル化とも呼ばれています。この方法では、データを送る際には内容を暗号化することで盗聴の危険性を減らします。
そのほかの方法として用いられているのが、トンネリングです。トンネリングとは通信網の中にトンネルである仮想回線を作り、送り手と受け手だけが情報を見ることができるようにするものです。このような方法を用いて、専用線と同程度のセキュリティを確保できます。
VPNにも種類があることを理解する
VPNはさまざまな技術を用いて、インターネットなど公衆回線でも専用線と同様に安全に通信できる利点があります。一口にVPNといっても、実は2つの種類があるため、法人向けインターネット回線を導入・検討している場合、その違いを知っておくことが大切です。まず取り上げたいのが、インターネットVPNです。
こちらは一般に使用されているインターネット回線を用いてセキュアな仮想領域を構築するため、データの送信側・受信側の双方に専用の機器やソフトウェアのインストールが必要となります。メリットは価格が比較的安価であることと、インターネットに接続できれば使用できることです。
反面、デメリットは誰でも使用できるインターネットを利用するため、不正アクセスの攻撃を受けたり、回線状況の影響を受けたりしてしまう点にあります。さらに障害発生時の問題解決は自社で行わなければならないため、原因の究明や問題の解決に時間を要する可能性があります。
もう1つの種類はIP-VPNと呼ばれるもので、通信事業者の閉域ネットワークを使用しての通信になります。インターネットを用いたものよりも価格は高くなりますが、通信事業者による閉ざされた通信網を使用するため、通信の品質が保たれやすいのがメリットです。そのため、専用線により近いセキュリティを重視した環境を利用できることに魅力を感じる法人は多いようです。
VPNサービスを選ぶときのポイント
今では通信事業者やソフトウェア・通信機器販売会社を中心に、さまざまなVPNサービスが提供されています。しかし、法人で使用することを考えると、価格だけでなく多角的な面を考慮して慎重にサービスを選びたいものです。選ぶ際のポイントとしたい最初の点は、セキュリティの強度です。安全性がより高いとされているのはIP-VPNですが、どのサービスを採用するにしても会社が求める安全性のレベルにかなったものを利用することが企業としての信頼性を保つことになるでしょう。
次に考慮したいのが、運用管理やサポート面です。とくにインターネットVPNを利用する場合は、社内で運用に必要な設定や、運用を開始してからのトラブルや障害対応が求められます。そのため、社内で運用することによる負荷を考え、初期設定が終われば事業者に対応を委託できるIP-VPNを導入するケースが多くなっています。
サービスを選ぶ際のさらなるポイントとしては、通信速度が挙げられます。個人ではなく法人での使用となると、一定のサービス品質を確保したいと考える法人は多いはずです。通信回線サービスには、通信速度を補償しないベストエフォート型と、ある程度の通信速度を保証する帯域保証型があるので、費用対効果を考えてサービスを選ぶことが大切です。加えて、最近の多様な働き方を考えて、さまざまなデバイス端末への対応が可能なサービスを選ぶことも検討できるかもしれません。
法人向けインターネット回線を考えるにあたり、知っておきたいのが専用線とVPNとの違いです。さらには、VPNにも種類があり、自社の運用ポリシーや社内体制・求める安定性などによって選ぶべきサービスに違いが出ること、また多様な働き方に対応したサービスを検討すべきことも理解しておくことが必要です。