テレワークや外出先での業務が一般化する中、社外から安全に社内ネットワークへアクセスする手段としてリモートアクセスやVPNが注目されています。本記事では、リモートアクセスとVPNの基本的な違いを整理しつつ、法人が導入を検討する際に意識すべきポイントをわかりやすく解説します。
リモートアクセスとVPNの基本を整理する
リモートアクセスとVPNは、どちらも社外から社内のシステムに接続する手段ですが、仕組みや導入形態には大きな違いがあります。それぞれの特性を理解することが、自社に最適な方法を見極める第一歩です。
VPN(Virtual Private Network)とは?
VPNは、インターネット上に仮想的な専用回線を構築し、外部から社内ネットワークにアクセスする技術です。第三者に盗み見される心配なく、社内と同じような環境で業務を行える点が特徴です。
専用のVPNソフトやハードウェアを使って接続し、IPアドレスの制御やアクセスログの取得も可能なため、セキュリティ面で一定の安心感があります。
リモートアクセスとは?
リモートアクセスは、社内の端末やシステムに外部から接続する方法の総称です。VPNもリモートアクセスのひとつですが、VPN以外にクラウド型のリモートデスクトップサービスやアプリケーション単位でアクセスを制御できる製品も含まれます。
最近では、ブラウザだけで利用できるタイプも登場しており、導入や運用の手軽さが注目されています。
両者の違いを明確にする
VPNはネットワーク全体へ接続するのに対し、リモートアクセスは特定の端末やアプリケーションへの接続に限定できます。また、VPNは比較的コストがかかる一方で、リモートアクセスサービスは導入しやすく、小規模な環境でも活用しやすいという特徴があります。
どちらが優れているというより、自社の業務内容やセキュリティポリシーに応じた選択が求められます。
法人が重視すべき3つの選定ポイントとは?
リモートアクセスやVPNを導入するにあたっては、セキュリティの確保だけでなく、実際の運用における利便性やコストなど、総合的な視点から選ぶ必要があります。
セキュリティ対策の水準を確認する
社外からの接続は、情報漏えいのリスクをともないます。導入を検討する際は、通信の暗号化、アクセス制限、認証方式(多要素認証など)、ログの管理機能などが備わっているかを必ず確認しましょう。
とくにVPNはネットワーク全体にアクセスできるため、万一の侵入時に被害が大きくなりやすい点に注意が必要です。最近では、ゼロトラストモデルを前提としたアクセス制御を実現できるリモートアクセスサービスも増えてきています。
操作性と利用環境への適合性
導入したシステムが社員に使われなければ意味がありません。操作が複雑すぎると、現場から不満が出る可能性があります。社用端末のみで使えるのか、個人のスマートフォンやタブレットでも利用できるのかといった、利用環境への適合性も重要なチェックポイントです。
たとえば、クラウド型のリモートデスクトップは、端末に依存せずどこでも同じ作業環境が整うため、モバイルワークに適しています。
コストと運用体制のバランス
VPNは初期導入費用や専用機器の保守費用がかかる場合があります。一方、クラウド型のリモートアクセスツールは月額課金制が多く、導入障壁は低い反面、長期的にはコストが蓄積する可能性もあります。
また、導入後の運用管理を社内で担えるのか、ベンダーに依頼する必要があるのかといった体制面の検討も必要です。IT管理者の人数やスキルに応じて、最適な構成を考えなくてはなりません。
自社に合ったリモートアクセス環境を構築するには?
選定ポイントを踏まえたうえで、最適なアクセス方法を見つけるためには、自社の働き方やセキュリティ方針と照らし合わせた評価が不可欠です。導入後のトラブルを防ぐには、事前の準備と設計が鍵を握ります。
利用目的を明確にする
まずは、なんの業務をどこからリモートで行いたいのかを洗い出します。たとえば、営業担当が出先から顧客情報にアクセスしたいのか、経理が在宅で会計ソフトを操作したいのかなど、用途によって必要な機能は異なります。
ネットワーク全体への接続が必要な場合はVPN、特定の業務ツールだけでよいならアプリ単位で制御できるリモートアクセスが向いているケースもあります。
社内ルールと連携させる
アクセス権限や使用端末の制限、社外もち出し時の取り扱いルールなど、リモートワークに対応した社内規定の整備も忘れてはいけません。ツールの導入と同時に、利用マニュアルの作成やセキュリティ研修を行うと、全社的なセキュリティ意識を高められます。
トライアル導入と運用評価
本格導入前に一部部門でトライアルを実施すると、実際の運用における課題が見えやすくなります。トライアル中に操作性やパフォーマンス、トラブル発生時の対応などを検証し、改善点を洗い出しましょう。
また、導入後も定期的な運用レビューを行い、セキュリティ要件の変化や利用状況に合わせた見直しを続けるのが重要です。
まとめ
リモートアクセスとVPNはどちらも、社外から安全に業務を行うための重要な手段ですが、仕組みや用途には明確な違いがあります。VPNはネットワーク全体に接続できる強固な方法として有効ですが、セキュリティや運用コストを考慮する必要があります。一方、クラウド型リモートアクセスは導入しやすく、柔軟な業務スタイルに対応しやすい反面、ツールごとの機能差を理解する必要があります。導入の際は、自社の業務形態やセキュリティ方針に合った方法を選ぶことが不可欠です。あわせて、社員の使いやすさやコスト、今後の拡張性も見据えて検討しましょう。安全で快適なリモート業務環境が、企業の生産性と信頼性を高める鍵となります。
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引用元:https://www.gate02.ne.jp