法人向けインターネット回線のメリットとして固定IPアドレスを取得できることがよく挙げられています。取得できる数は一つだけではなく、複数取得して運用することも可能です。二つ以上のグローバルIPアドレスを手に入れるのにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
目次
IPアドレスとは?
IPアドレスとは、ネットワーク上で通信をおこなう機器に割り振られる「インターネット上の住所」のようなものです。また、それぞれにおいてIPアドレスが自動で変わる「動的IP」と、常に一定で変わらない「固定IP」が存在します。
さらに、IPアドレスは使用環境によっても種類が異なり、LANで使われるプライベートIPアドレスと、WANで使われるグローバルIPアドレスに分かれます。
WANとLANの違いとは?
WANは、「Wide Area Network」の頭文字をとったものです。カタカナ読みをするとワールドエリアネットワークとなり、その名の通り広域に展開されたネットワーク網を表します。
わかりやすくいえば、インターネットの通信網を指し、全世界であらゆる情報のやり取りが可能になっているのもこのWANのおかげです。地球の裏側に住む方と話をしたり、自身の知らない方とオンラインゲームで数十人と同時につながることができたりするのもWANが地球上のネットワークを張り巡らせているからです。
これに対しLANは、「Local Area Network」の頭文字をとったものです。カタカナ読みをするとローカルエリアネットワークとなり、その名の通り狭域に展開されたネットワーク網を表します。ローカルは、地元、ある場所の近辺という意味なので、ここでは自身を中心とした近場のネットワークを指すことになります。
具体的には、家の内部、会社内などのネットワークを表し、「自身のパソコンの画像を父親のパソコンへ移動させる」「社内チャットを介して情報伝達する」などの用途で使われます。上記のようにWANとLANの違いは、大雑把に言えばネットワークの広さの違いと考えて差し支えないでしょう。
IPアドレスには動的と固定の2種類がありますが、法人用途では安定した通信とセキュリティ確保のため固定IPが有利です。特にWAN上で複数の外部接続先(例:複数の支店やWebサーバー)を管理するには、固定IPの活用が非常に有効です。
固定IPアドレスとは?その仕組みと法人における主な活用メリット
固定IPアドレスとは、インターネット接続時に常に同じ番号が割り当てられる「変わらないネットワーク上の住所」のようなものです。通常、IPアドレスは接続のたびにプロバイダから自動的に割り当てられるため、接続のたびに変化します(動的IPアドレス)。しかし、ビジネス用途ではIPアドレスが頻繁に変わることによって通信やアクセスの安定性に支障が出ることがあるため、あらかじめ固定されたIPアドレスを使うケースが増えています。
例えば、会社で利用するメインサーバーのIPアドレスが変わってしまうと、クライアント側からの接続情報を都度書き換えなければならず、業務に支障をきたします。特定のIPからでないとホームページの内容を更新できないように制限を設けている場合など、セキュリティ対策としても固定IPは欠かせません。加えて、外部から端末へアクセスする際や、どの端末からデータを送信したかを明確にする必要がある場合にも、IPアドレスを固定しておくことでトラブルを未然に防げます。
法人における活用例としては、各拠点に設置した監視カメラや業務サーバーに固定IPを設定することで、遠隔から安定してアクセスできるようになり、業務効率やセキュリティの向上が期待されます。実際に、多店舗展開をおこなっている企業が固定IPを活用して遠隔監視体制を構築し、年間数百万円~1,000万円規模のコスト削減に成功したケースもあります。
さらに、テレワークの普及に伴い、自宅や外出先から社内ネットワークに安全かつスムーズにアクセスできる環境づくりにも役立ちます。特定の端末にのみアクセスを許可するなど、柔軟なアクセス制御が可能になるため、セキュリティ面でも安心です。
このような利便性を持ちながらも、導入コストは月額1,000円前後と比較的安価で、初期費用も2,000円程度とされることが多く、費用対効果の高い選択肢といえるでしょう。
複数あるとどういうことになるのか
複数の固定IPアドレスを取得すると、複数のパソコンなどの機器をそのアドレスの番号によって特定できるようになります。例えば、会社のサーバーを二つ用意して運用したいというときには別々にIPを割り当てることが必要になるでしょう。
部署ごとにファイル共有をするためのサーバーを用意するとなれば、部署の数だけIPを用意しなければなりません。ホームページの更新をする担当者がいる場合には、サーバーとは別にIPを割り振ったパソコンを使用させるようにすると、サーバーと独立させられます。
固定IPになっていると外部からアクセスできるので、不正アクセスを受けるリスクも高まるのは確かです。そのため、ホームページの更新用と社内での情報共有用にIPを分けて、異なるセキュリティーレベルにしておくとより安心できる形で運用が可能になります。
また、パソコンだけでなく複合機などの他の機器についてもIPが割り振られています。複合機にインターネットからアクセスして印刷やスキャン、FAXなどをおこなうという場合には固定IPになっていたほうが便利です。
自動的に割り振られるようにしていると、印刷したいと思ったときに毎回複合機を検索してアクセスしなければならなくなります。複合機が複数ある場合にはその数だけ固定IPを取得しておくのが合理的です。
このように複数の固定IPを取得していると、いつも特定のIPを指定することでアクセスできるようにしたい機器がたくさんあっても割り振ることができ、便利に使用することができるのがメリットといえます。
複数取得するには追加料金がかかるので注意
固定IPは多いほど良いのかというとそうとは限りません。たくさんあればそれだけ多くの機器のアドレスを特定できるようになるのは確かで、活用の仕方次第ではとても便利になるでしょう。
しかし、一般的には固定IPは複数取得すると追加料金がかかる仕組みになっています。一つあたりいくらという形で料金が設定されていることが多いため、できるだけ少ない数にしたほうがコストは削減できるのです。
特に固定しなくても良い機器については自動で割り振られるようにしておいたほうが良いとも考えられます。また、業者によっては取得できる固定IPの数が制限されていることもあるので注意しましょう。
数十もの固定IPを手に入れようとすると難しいといわれてしまう可能性がありますが、業者によっては実質的にほぼ無制限に固定IPを作ってくれます。運用上、固定IPがどうしてもかなり必要になるという場合にはどの業者に依頼するかはよく検討する必要があるでしょう。
固定IPアドレスを取得できるのは法人向けインターネット回線のメリットですが、希望すれば複数取得して運用することも可能です。複数あるメリットは取得した固定IPの数だけ機器を特定できるようになることで、サーバーや複合機などの外部からアクセスする機器を全て固定IPにしておくと使い勝手が良くなります。取得するには追加料金がかかるということを念頭に置いて、いくつ取得するのが良いかをあらかじめ考えておきましょう。
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引用元:https://www.gate02.ne.jp