インターネットが遅くて違うサービスに切り替えようと思ったとき、どんなところに注意して選べばいいか分からないという方も多いのではないでしょうか。特に、会社で利用できる法人向けサービスに関する情報は非常に少ないため、苦労されている方も多いと思います。
そんな方々に向けて、サービス比較を行う上で押さえておきたいポイントを3つご紹介します。
「最大1Gbps」の回線が実際には「1Gbps」の速度が出ない理由
個人向けの回線でも最近のサービスは「1Gbps」という速度が一般的です。「1Gbps」というのは「1 Giga Bit Per Second」のことで、1秒間に1ギガビットのデータ量を転送できるスピードです。もしも本当にこのスピードが出れば、動画ファイルなどの大きいサイズのデータをやりとりしてもストレスを感じることはないでしょう。しかし、実際の通信で1Gbpsものスピードが出ることはまずありません。1Gbpsというのは、計算上の数値でしかなく、実際の通信においては様々な要因で速度は下がってしまうため、数十Mbps~数百Mbpsの速度になってしまいます。カタログの速度欄を見てみるときちんと「最大」と書かれていることが分かります。それなら、実際にはどれくらいの速度が出るのか気になると思いますが、これは実際に通信を行ってみるまで通信事業者でさえ分かりません。しかも同じ料金を支払っている同じサービスの利用者でも環境によってかなりばらつきが発生します。もし「これぐらいの速度は出ると思います」なんてことを言ってしまうと、出なかったときにクレームにつながりかねません。したがって、通信事業者は「最大」と付けることによって実際の速度を明示することを避けているのです。
このようなサービスのことを「ベストエフォート型」と言って、「最大限努力はしますが、実際のことは分かりません」ということを表しています。もし「絶対にこのスピードを出してほしい」というときは、「帯域保証型」の回線を選ぶ必要がありますが、この「帯域保証型」の回線は「ベストエフォート型」の回線とは比べ物にならないほど高額になります。
速度が低下してしまう原因は?
個人向けサービスの場合、たいていは「共有型」の回線です。これは、1本の光ファイバーを何本にも分岐させ近隣のユーザー同士で共有し合っている回線のことです。サービスによって異なりますが、フレッツであれば最大32分岐していますので、32人のユーザーで1本の回線の帯域を分け合う可能性があります。そんな状況でみんなが一斉に通信をしてしまうとデータの総量が大きくなり、通信の渋滞による速度低下が起こりやすくなります。また、1ユーザーでも極端に大きなデータ量を通信していたら、残りの31人のユーザーは自分たちが小さなサイズのデータしかやりとりしていなくても、影響を受け遅くなってしまう可能性があります。
一方、法人向けサービスには「専有型」の回線があります。これは、1本の回線を分岐させずまるごと1ユーザーに割り当てるというものです。この「専有型」の回線であれば、回線の能力を自分の通信のためだけに使うことができるため、渋滞による速度低下は起こりにくくなりますし、他のユーザーの通信状況の影響を受けることもありません。
そのため、同じ「ベストエフォート型」の回線であっても、「専有型」の方が「共有型」よりも高速で安定した通信が期待できると分かります。
バックボーンってなに?
インターネットを使って通信を行う場合、自分のパソコンを出発したデータは回線事業者の設備を通った後、プロバイダ業者の設備を通ってインターネットに到着します。このとき、プロバイダ業者の設備のうちインターネットにつながる部分のことを「バックボーン」と呼びます。このバックボーンの品質は、プロバイダ毎にかなり差があります。高品質なバックボーンは、たくさんの回線事業者の設備から集まってきた通信を十分にさばけるだけの能力がありますが、品質の良くないバックボーンではさばききれず速度低下などが発生してしまう可能性があります。フレッツ回線を利用するにはプロバイダとの契約が必要になりますが、プロバイダの利用料金に差があるのはこの品質の差によるものです。
また、法人向けのサービスでは、個人向けサービスにおいて回線事業者とプロバイダ業者それぞれの管理管轄に分かれていたものが、同一業者での一括管理になっている「一体型サービス」というものがあります。この場合もインターネットへの経路は同じで、回線事業者が管理しているバックボーンを通らなければいけません。バックボーンのスペックも忘れずに確認するようにしましょう。
なお、バックボーンの品質も回線測度と同じように「〇〇Gbps」という速度表記になっていて、この数値が大きいほどより多くのデータを高速に処理できるということを表しています。
同じ「1Gbps」であっても料金が異なる理由をお分かりいただけたでしょうか。
回線を選定するときには、通信速度だけでなく設備の構成や提供形態を確認することで比較しやすくなります。重視する条件とかけられるコストを照らし合わせながら、最適なサービスを選ぶようにしましょう。