インターネット回線について調べていると、専門用語がたくさん出てきて困ったことはありませんか?「ベストエフォート型」もそんな用語の一つで、見聞きしたことがある方も多いと思います。オンラインで行う会議やセミナーなど、テレワークが普及している今だからこそ、言葉の意味や特徴をきちんと理解して、上手に活用していきましょう。
ベストエフォートとはどのような意味?
ベストエフォートとは、直訳すると「最大限の努力」という意味で、インターネット回線におけるベストエフォートとは「提示している通信速度が提供できるように、最大限に努力します」という意味で多く使われます。つまり、「最大限努力はしますが、品質の保証はできません」ということになります。よく明記されている「最大〇〇bps」という通信速度は、最適な環境が整った場合の理想の速度であり、実際にその速度になることはほとんどないといえます。
インターネット回線の通信速度は、PCの性能や負荷状況、ネットワークの混雑状況など、さまざまな要因によって左右され、時間帯によってつながりにくくなったり通信が切断されてしまったりすることもあります。どのくらいの通信速度になるかは通信事業者にもわからず、常に一定の通信速度を保つことは難しいことです。したがって、ベストエフォート型はこのような表現方法での契約形態となっています。
ベストエフォート型のインターネット回線が日本に多く普及している理由
ベストエフォート型とは反対の意味として「ギャランティ型」(帯域保証型)があり、「一定の通信速度(帯域)を保証する」というものになります。欧米では広く普及していることもあり、品質が保証されているギャランティ型のほうが信頼性も高く理想的かと思われますが、一般的に日本に多く普及しているのは、ベストエフォート型です。そこには歴史的な背景が関係しているといわれています。
日本のインターネット回線は、電話回線を用いた「ISDN」や「ADSL」の普及とともに急速に広まりました。電話回線を活用して、簡単にインターネットに接続できるという使いやすさが受け入れられた結果と見られますが、専用機器の設置やエリアによって通信速度が遅いなど、それぞれにデメリットも多く、通信速度も安定しませんでした。
そこで、必ずしも最大通信速度を保証するとは明記できず、ベストエフォート型という形になっています。そして、ベストエフォート型が普及した最大の理由は「料金の安さ」です。インターネットが普及した当時もギャランティ型のサービスはあったのですが、価格が高かったため、あまり利用されませんでした。
ギャランティ型は、通信速度や障害発生時の復旧時間等を保証しているため、専用の設備や回線ごとの管理、予備回線の確保などが必要であり、非常に高コストとなってしまいます。月々の利用料も高いため、どちらかというと法人向けサービスともいえます。
一方ベストエフォート型では、共有回線を使用するなど管理を簡略化することで低コストを実現し、利用料を抑えることを可能にしました。とくに一般家庭では、通信の安定性より料金が重視されたため、導入しやすくなり普及につながったと考えられます。
ベストエフォート型のインターネット回線を企業に導入する利点とリスク
企業に導入する場合は、ベストエフォート型のデメリットを踏まえ「ニーズに合っているか」「重要視するポイントは何なのか」など、慎重に検討する必要があります。日本では大手通信事業者によって、品質のよい光通信網が整備されています。
また、ケーブルの地中化や電力の安定供給等の結果、ベストエフォート型でも障害や停電によって通信断が長時間に及ぶことはほとんどありません。データ量があまり多くない、通信速度や安定を重要視しないなど、業務に大きな支障がない場合は、コスト面を考えてもベストエフォート型を導入するメリットは充分期待できるでしょう。安価で利用できるので、予備回線として設置するのもいいかもしれません。
しかし、通信速度や安定が約束されていないので、実際に導入するまで性能がわからないこともあり、データの量が多い場合や一定の通信速度が必要な業務などには不向きといえます。また、一瞬でも通信が切れてしまうことで業務に大きな支障があるときや、品質を保つことが重要な場合は、リスクが大きいため向いていません。
ベストエフォートは、最大限の努力を表すものであり、品質の保証はしないという契約の形態です。よって、提示されている通信速度や安定は望めませんが、ベストエフォート型のネットワークサービスにもさまざまなものがあり、リスクを軽減できるようなツールも存在します。導入する場合はメリット・デメリットを考慮し、用途に合わせた選択することで、快適に活用できるでしょう。